カラープリント

涼しくなったら、久しぶりにカラー暗室に入るつもりだ。ここ暫く、暗室から遠ざかっていたけれど、もう一度、自分でプリントをしてみたいと思っている。

カラープリントを自分の手で行うようになったのは、私がナダールのスタッフになった2012年頃から。最初は、どのようなプリントに仕上げたいのかが自分でもわからず、色を見る力もなかった。プリントしている最中には思い通りにできたと思っていたのに、翌日もう一度見てみたら色が汚く感じられて、自分のプリントの下手さに落ち込むことも。それでも、自分の手で作り上げていく感覚は好きで、現像済みのネガが何本か溜まると、早くプリントしたくて暗室ができるタイミングを楽しみにしていたものだった。

それが、ここ2年ほどパタッとやめてしまって、プリントが必要な時はお店に任せていた。写真を自分と引き離した存在にしたくて、その為に他人にプリントしてもらうことが必要なのだという思いも少しはあったけれど、本当のことを言えば、プリントまで自分の手で仕上げたいという渇望がなくなっていた。理由はわからない。忙しかったせいかもしれないし、大変な思いをしてまでプリントしたい作品に取り組めていなかったということかもしれない。

暗室は思いのほか大変なのだ。やれる時に一気に作業するので、一度暗室に入ると長時間プリントし続けることになる。集中力を使うので、終わる頃にはヘロヘロ。金銭面だって馬鹿にならない。印画紙1箱買うのだって、諭吉さん1人では済まない。準備も、液を作るところから自分でする必要がある。とりわけ気が重いのが後片付けだった。プロセッサーから液を抜いて、何度か水を入れ替えながら循環させて洗う。ローラーなどもすべて取り外して流水で細かい部分までしっかり洗う。この後片付けの作業だけで1時間以上の時間がかかる。しっかり丁寧にやらないと大事なプロセッサーを傷めてしまいかねないので気が抜けない。

暗室で自分でプリントを作るのは、こんなにも手間暇かかることなのだけれど、そのこと自体に特別な価値があるわけではない。手焼きしたから偉いなんてことは全くない。ただ自分自身にとって「そうする理由」があるからする。それだけのこと。でも、何かを作ろうと思う人にとっては、その自分にだけ価値のある理由こそ、大事にするべきことなのかもしれない。だから、私は暗室に戻ってみようと思う。

久しぶりの暗室は、きっと苦労するだろう。