はじまり

はじまりを覚えている。
その瞬間を、今も鮮明に。

 

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本当の意味で人と出会う(知り合いになる時とは別)とか、恋に落ちるとか、人生を変えるような決断のきっかけを得るとか、自分にとって大切な何かがあった時、ほとんどの場合、そのはじまりの瞬間を覚えています。

と言っても、特別な何かが起こる訳ではなく、ビビビッと雷に打たれるような衝撃が走ったりもしません。ただ会話の途中で何気なく目が合った瞬間だったり、ドアを開けて入って来たその人に気付いた瞬間だったり、夕方の綺麗な空を見上げた瞬間だったりするので、自分自身、まさにその時にそれが「はじまり」だと気付くことはありません。けれど、そんな何気ないことがなぜか強く印象に残ったときは、しばらしくして、「はじまり」だったのだと気付く瞬間が訪れます。

物事がごく自然に流れて変化していく時、それを「機が熟す」と言うのだと教えてもらったことがあります。

転機というものがあるとしたら、それは、“私が転機です!”なんて名札を下げてドラマチックに登場するものではなく、普通の生活の中にさらりと紛れ込んでいて、それと気付かないくらいにそっと存在しているようなものなのかもしれません。